目次
序章 刑法上の製造物責任をめぐる不作為犯論の問題状況
第1章 ドイツの判例及び学説にみられる欠陥製造物に関する刑事責任の特質
第1節 考察の視点
第2節 皮革スプレー事件判決(ドイツ連邦通常裁判所第2刑事部1990年7月6日判決)の概要
第3節 製品流通後の製造・販売業者の製品回収義務の発生根拠
第4節 「企業」の製品回収義務と組織の中の「自然人」の作為義務
第5節 結語―我が国の議論への展望
第2章 欠陥製造物に対する法規制の状況
第1節 考察の視点
第2節 事前規制型刑罰法規による安全確保
第3節 事後規制としての過失犯処罰
第4節 結語
第3章 わが国の判例にみられる欠陥製造物に関する過失責任の特質
第1節 考察の視点
第2節 製造・販売段階の刑事過失
第3節 製品流通段階の刑事過失
第4節 結語―判例理論の特質及び問題点
第4章 不作為態様の過失犯に関する議論状況―とりわけ製品流通後の刑事過失について
第1節 考察の視点
第2節 保証者説の内容
第3節 過失構造論と不作為犯論
第4節 過失犯の存在構造・規範構造
第5節 組織体の中の自然人の注意義務
第6節 結語
終章 総括と展望
内容説明
欠陥製品を起因とする死傷事故に関する過失事例に焦点を当てて,「不作為態様の過失犯」は「不作為的過失犯」として捉えるべきものであり,そこでの問題は,「純然たる過失犯」として展開する理論的方向性を提示することが,本書の狙いである。この結論は,反面では,「不作為態様の過失犯」は,不真正不作為犯の理論領域ではないことを論証するものでもある。 具体的な判例として,製造・販売段階の刑事過失事件では,さつまあげ中毒事件,森永ドライミルク砒素中毒事件.カネミ油症事件,など。製品流通段階の刑事過失事件では,薬害エイズ事件,パロマガス湯沸器一酸化炭素中毒死傷事件,三菱自工製トラックタイヤ脱落事件,などを取り上げ,判例理論の特質と問題点を明らかにしている。